今回お話を伺ったのは、トヤオ工務店で新築を建てたNさまご家族。
東京から帰省のたびに訪れていたいなべ市の土地は、畑と森が広がり、子どもたちと“野遊び”を楽しむ大切な場所でした。
マンション暮らしの中で住まいのあり方を見つめ直す中で、外とつながる暮らしを叶えるためこの地に家を建てられました。
お引き渡しから1年。
Nさまご夫妻は、今の暮らしをこう語ります。
「帰ってくると、ほっとする」 「この家に戻るために働いているみたい」
今だからこそ語れる、暮らしと家づくりの話を伺いました。
工務店選びでは、他社も含めて情報を集めていたと言います。
その中でトヤオ工務店を知ったきっかけは、雑誌『チルチンびと』でした。
いなべ市の近くで雰囲気のある家をつくるところがないかと探していた中で誌面に載っていた「トヤオ工務店」の名前に目が留まりました。
「近くにあるなら、一度話を聞いてみようと思って。」
そして驚くのが、その最初の接点です。帰省や出張のタイミングで、アポイントなしで“ふらっと”立ち寄り、社長と2〜3時間話し込んでしまったというエピソード。
「最初は接点だけ作れれば、と思ったのに、本当に二三時間話しちゃって。…このおじさんすごいなって」
ご夫婦は、事前に施工事例など「どんな家を建ててきたか」を見てきてちゃんとした家づくりをしている会社だと感じていたと言います。
「お会いしたら面白そうな人がいっぱいいるな。もうちょっと話したいな、聞きたいな、教えてほしいなと思った」
実績への信頼と、会って感じた空気感。
その両方が重なったことで、「この人たちと家をつくりたい」という気持ちが自然と固まっていきました。
旦那さまこだわりの奥行感。ロフトや廊下には余白の取り方を工夫しあえてすべてを見せ切らないつくりが随所に。
玄関に入るとキャンプグッズやお気に入りのインテリアがお出迎え。
木の建具が家全体の雰囲気をやわらかくつないでくれています。
家づくりを進める上で核になったのは「どう暮らしたいか」
ご家族が思い描いたのは外とつながる日常でした。
畑があり、森があり、子どもたちを連れてよく遊びに来ていた場所です。もともとは奥さまのお父さまの土地で、畑仕事を手伝いながら過ごしてきました。
「畑つくって野菜育てたい」
「森で子どもと遊びたい」
「梅の木を見ながら、思い立ったときにいつでもバーベキューができたら面白い。」
東京の狭いベランダでも土を買って野菜を育てていたほど手を動かして育てる暮らしが好きだった旦那さま。
「外とつながっている感覚を、特別じゃなく日常にしたかったんです。」
と振り返ります。
この土地は隣家が密接していない環境も相まって「人目を気にせず暮らせる」自由さが、暮らし方の発想をさらに広げてくれました。
そして、そんな「外とつながる暮らし」のイメージと並んで、家の雰囲気を言葉にするときに出てきたのが旦那さまの「山小屋」のイメージ。
「山小屋みたいな雰囲気にしたい」
それを聞いて社長からも
「家は山小屋な感じで、庭は牧場って感じね」
という言葉が出てきて、内と外のイメージがひとつのフレーズにまとまりこの住まいの方向性がくっきりしていきました。
リビングとつながるウッドデッキは丸太柱にもたれながら自然を眺め風を感じるセカンドリビングのような場所。
庭のバーベキューエリア。電線が一本も視界に入らない空の下で気兼ねなく火を囲めるそんな“贅沢”が日常になっています。
梅の木はお父さまが長く育ててきたもの。畑と同じように手入れや季節の実りも暮らしの一部としての楽しみ。
住み心地を尋ねると、返ってきた答えはとてもはっきりしていました。
「何もかも違います。本当に。」
香りも、空気も、新鮮に感じる。
「マンションで感じていたこもった空気や澱んだ感じが無くなって、季節を問わず家の中の空気が気持ちいい。」
夏も暑さはあるものの「窓を閉めた方が涼しい」と感じる日があるほどで、空気の巡り方がまったく違うといいます。
奥さまは冷え性で、当初は寒さを強く警戒していたと言います。
高気密高断熱も検討したものの、社長の考え方はまた少し別の方向。家は“呼吸”させないと悪くなるという話も出てきました。
その中で選んだ断熱材は「ウールブレス」。
そして床材は杉を中心に採用。
「床はスギでよかった」
「めちゃくちゃ暖かいってことはないけど、“寒くない”のがすごく嬉しい」
「スリッパ履かないですね、全然」
スリッパなしで過ごせる日常が、快適さを物語っています。
もともと好きなものを丁寧に選ぶタイプのNさまご夫婦。手持ちの家具を中心に買い揃えは最小限。必要になったダイニングテーブルは造作で「こういう形がいい」を再現してもらい反り具合まで現場で確認。椅子だけは新居のタイミングで新調しました。
薪ストーブはめちゃくちゃ大活躍とのこと。でも初年度は「綺麗に使いたい」気持ちが勝ったそうで天板で料理はまだしていないそう。なんとも微笑ましく暮らしを大切にしている様子が滲みます。
浴室前の脱衣室の壁と床はヒノキ張り。調湿効果もあり寒い冬で足裏がひやっとせず過ごせるぬくもりある空間です
設計でポイントになったのが奥さまの手描きの絵でした。
図面だけではイメージできない。収納量も、サイズ感もイメージが掴みにくい、だから描いてみて考えたそうです。
「私ね、わかんないんですよ。図面はわからないけど決めることいっぱいあるじゃないですか。自分でも考えるためにやってたんです。」
CADやCGパース、言葉だけでは伝えにくい空気感を、絵が補ってくれました。
イメージを共有する場面では、CADパースよりも奥さまの手描き絵ががしっくりくることも多かったそう。
「描いた絵が、もうそのままみたいになった。 想像通りにできるのが、すごいと思いました。」
CADで作られた正確な図面よりも、手描きの絵の方が住む人の想いや理想が伝わってきます。
結果として、施主側の「こうしたい」がブレずに伝わり想いを丁寧に汲み取り、形にすることができました。
廊下に飾られているのはご主人と奥さまの手描きの絵たち。家族の時間や記憶がにじむ線によりお二人らしさが暮らしの中にも表れています。
奥さまの手描きにキッチンイメージのスケッチ
実際に完成したキッチン
素材も、家の印象を決める大事な要素。
室内に入ってまず目を引くのが存在感のある松の梁です。
「せっかくトヤオさんに建ててもらうから、もう木をふんだんに使いたいと思って」
材木の現場で出会った貴重な松を梁として採用しました。
「社長に材木市場に連れて行ってもらって、いい松の木があるんだって教えてくれたんです。」 「そこの親父さんが今 4本だけしかなくて、これ多分手に入らないんだよねみたいな話を聞いて、社長がこれで行っときましょう!って。」
結果としてこの松の木が空間の軸となり、「すごい存在感になった」とのこと。
梁にはヒノキが多い中で松を使うのは珍しい選択だったそうで、棟梁も「これはなかなかない」と言っていたのが印象的だったといいます。
築年数を重ねた古民家のような梁の表情が好きだったご主人の感覚と、現場で探し、提案する職人の力が重なり合い“雰囲気のいい木の家”が具体的なかたちになっていきました。
この家の主役のひとつになった松の木の梁。構造でありながら、結果として、この梁が家のイメージを決める“軸”になっています。
太く頑丈な梁にはロープをかけて家の中に、子供たちの遊び場ができました。
松の梁の話の流れで「玄関のところも印象的なデザインですよね。これは、こういうデザインがいいなというイメージがあってできたんですか?」とたずねると
「あれは棟梁スペシャルです。棟梁のオリジナル」
なんと玄関の意匠は、最初から図面で決まっていたわけではなく、検討の中で“後から”立ち上がったものでした。
「設計の時にあそこのデザイン決まってたわけじゃなくて、後から出てきたやつ」 「古材もある方からもらってて、使えるところに活かしたいよねみたいな話をした時に、玄関外は古材を活かして玄関室内の梁は欅の木を使って…とか全部棟梁が提案してくれました」
「工務店で家をつくる」とはどういうことかを感じられるストーリー。
設計と現場が分断されず、素材の出会いと素材を知り尽くす現場の判断が、家の顔を作ることになりました。
棟梁のオリジナルデザインが光る玄関。素材の表情を活かしながら、この家の「顔」がかたちになっています。
庭側の軒下には丸太の柱が並びます。こちらも棟梁が丸太を一本ずつ削り全体のバランスを見ながら仕上げた手仕事のデザイン。
実は建築中の設計変更もあったそう。
象徴的なのが、キッチン脇の“奥さま専用スペース”として使う想定で壁で区切って通れない場所として設計段階では計画。
しかし建築段階で急遽トンネルを作ったこと。
「整理整頓が苦手なので、机を付けて壁にいろいろ貼り込み、ここだけ汚くしても見えないようにするつもりでした」
ところが工事が進み、筋交い(すじかい・強度を出すための斜め材)を入れる直前のタイミングで棟梁にこう切り出した奥さま。
「ここ、開けてもらえません?」
その日はちょうど、筋交いを入れる日でした。これを入れてしまってはもう変更ができません。
「まだ筋交いを入れてないから、今日ならいけるよ」
と、棟梁。
こうして壁の一部を開口して通り抜けできるように変更し、その“抜け”がキッチンとダイニングをぐるっと回れる回遊動線になりました。
毎週現場に通っていたからこそ修正できるタイミングが重なった出来事。
「これができていなかったら後悔したかも」
と話すほどの満足ポイントになっています。
当初はキッチン脇の奥さま専用スペースとして壁で区切る予定だった場所です。工事中に開口して「トンネル」のような抜けをつくり、回遊できる動線になりました。
リビングからキッチンへ視線が抜ける一枚です。家の中をぐるっと回れる回遊動線が、日常の動きやすさとして現れています。
最後に「こうしておけばよかった」と感じたことがあるか尋ねてみると
「納得してないところ…ないですね」 「すごい考え込んだから、それなりに全部納得はしてる」
小さな後悔として挙がったのは「コンセントの位置」くらいで、建物として大きな不満はないといいます。
投げかけられる問いに向き合い、考えて決め、現場で確かめ、また考える。
“施主がここまで関わることはないかもしれない”と言いながらも、その濃さを「楽しませてもらった」と振り返る姿が印象的でした。
ご家族に笑顔に迎えられて始まったインタビュー。
自然の中に佇むお家は暮らしの欲しい風景がそのまま入っていてスタッフからも思わず「素敵…っ!」と、ため息が漏れるほど。